No.1143849

旋律のベティ

立川余星さん

ロック詩人誕生! の瞬間を捉えた記念すべき一作

2024-05-06 19:47:03 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:33   閲覧ユーザー数:33

ベティウイルソンは、愛の魔術師。

その美貌で男を弄び、今日は買い物。明日は海外旅行。

宝石ダイヤにネックレス。なんだって手に入る。

 

大人になれば、肌は煤けてくる。

その頃に、本物の愛を手に入れればいい。

 

そんなこともわからぬ純朴な人々を、彼女は笑う。

 

ご都合の愛? 愛はご都合よ。

そんなことも分からぬ可愛い羊たちを、彼女は笑う。

 

と、そこで彼女のチェックが入る。

正しくは、鼻をつまむにして欲しいわ、と。

 

歳をとったことが老けた大人になるということなら、彼女は大人になった。

そして、本物の愛を手に入れる。

もう色艶のない彼女を愛してくれる人は、そう多くない。

 

たった一人の、貧しき節制した愛。

彼女と遊んできた人々、彼女に遊ばれた人々、彼女に遊ばれなかった人々、彼女が弄んだ人々。

 

ありとあらゆる人々が、彼女をポカンと見つめる。

彼女は、意外と賢い選択をしてきたのではないか、と。

 

「ベティ、愛はマナーだ。君の輝かしい履歴と、僕の働けなかった履歴。どっちが本当に美しいと思う?」

と、彼女に弄ばれた男。

 

「テーブルマナーなら、私も得意だわ」

彼女は老いた身体で、フォークとナイフをキュキュッと滑らせ、お気に入りのステーキを平らげるのだった。


 
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